top of page

学会発表の質疑応答で頭が真っ白を防ぐ3つの科学的方法

更新日:3月4日

学会発表の質疑応答で頭が真っ白になる研究者イラスト


【私が学会発表の質疑応答で頭が真っ白になった話】


学会発表の質疑応答で頭が真っ白になったことはありませんか?


学術会議に参加する際、内向的研究者にとっての第一難関は質疑応答ではないでしょうか。どんな質問が来るかわからないため、自分がきちんと答えられるか自信がない。発表することよりも、完璧に準備ができない質疑応答のほうが、私はドキドキします。発表までは、「よし!練習通りできたぞ。」と思っても、いざ質疑応答になると、さらに心臓はバクバクし、もう逃げ出したい状態に。


ある岡山での発表では、そこまで難しい質問ではなかったのに、緊張で頭が真っ白になり、しどろもどろ。後から「あーなんでこう答えなかったんだろう。」と思い返しては、恥ずかしくなる。「私って頭が悪いのかな…。」そんなことを思ってしまうことも、しばしばでした。



【なぜ緊張すると頭が真っ白になるのか】


でも、今ならなぜこんな風になったのかわかります。


人は緊張状態になると、脳がFight or Flight(闘争・逃走)モードになり、アドレナリンによって、身体が戦闘態勢になりやすくなります。心拍数が急上昇し、筋肉も強ばって、声がうまく出せない、声が震える。


一方で、緊張が高まった状態だと、自己モニタリングが過活動になります。「今変なこと言った?」「くだらないと思われてる?」など、そっちに脳のリソースが持ってかれてしまうのです。身体が戦闘態勢、頭も過覚醒……このダブルパンチで、脳のリソースが言語処理まで回りにくくなる。だから頭が真っ白になってしまう。しかもそれが英語での発表だとしたら…。いつものようにうまく話せないのは、むしろ自然なことなのです。


さらに、あなたが、私と同じようにインポスターシンドローム(詐欺師症候群)に苦しんでいるとしたら…。そこに完璧主義プレッシャーが加わり、質疑応答の「恐怖感」は限界まで高まります。


当時の私は、相手からの質問に完璧に答えられなければ、失敗だと思いこんでいたのかもしれません。また、正しい答えがあると思っていたのかもしれません。でもご存じの通り、高等教育以上では「正解」などないことの方が多い。


インポスターシンドロームに苦しむ人は、基準が高く、自分の知識が足りないことをよく認識しています。そのため「ちゃんと答えられるか」を疑いがちです。しかし、質疑応答の目的は、「正しい答え」を返すことだけではなく、「あなたがどう考えているか」を返すことでもあるはず。考えが違っても、それは一個人の見解。変な顔をされたとしても気にする必要は一切ありません!(私たち内向的研究者は、敏感に人の表情を読み取りすぎて、無駄に疲れている気がします。)


【これは生理現象であって、あなたのせいではない】


つまり、学会発表の質疑応答で、頭が真っ白になってうまく答えられないのは、あなたの能力が低いからではなく、これはれっきとした生理現象なのです。緊張が高まると、脳の警戒システム(扁桃体など)が優位になりやすく、理性的思考を担う前頭前野の働きが一時的に弱まりやすい。その結果として、言語化や論理の組み立てが難しくなることがあります。


学会発表で緊張して赤く光る脳、扁桃体ハイジャックの女性研究者

【明日からできる3つの対処法】


「そんなことはわかっているけど、どうしようもないんだ。」という声が聞こえてきそうですので、ここからは、明日から試せる対策をご紹介します。


1つ目は、気持ちのラベリングです。質疑応答が始まったら、自分の状態に名前をつけてください。例えば、「今、私は扁桃体にハイジャックされている。」など。感情を言葉にする(affect labeling)ことで、扁桃体の反応が落ち着き、前頭前野が働きやすくなることが研究で示されています。


2つ目は、口角を上げること。質疑応答が始まり、質問を聞いている間は、軽く笑顔で質問のメモを取ってください。表情は感情や情動処理に影響しうることが知られており、表情筋の動きを変えることで脳の反応が変化することも報告されています。


最後に、深呼吸をすること。質問が出たら、「ご質問ありがとうございます。」と先に応える。そして、心の中で、「吸って」「吐いて」と思いながら、深呼吸をしてください。4秒で吸って、6秒かけて吐くを3回。ゆっくりした呼吸は、副交感神経を優位にして、不安を下げる助けになることが報告されています。


「こんなに相手を待たせていいのか?」と思うかもしれませんが、大丈夫。最初に「ご質問ありがとうございます」と返しているので、リアクションはできています。この数秒の間が、あなたの脳に整理の時間を与えてくれます。


私も岡山の発表では失敗しましたが、この3ステップを意識するようになってから、落ち着いて質疑応答に臨めるようになりました。緊張をしないようにはなれませんが、緊張をコントロールする術を知ることで、心の準備ができるようになります。ぜひ次回の学会発表で、あなたも実践してみてくださいね。


「次回は『懇親会が辛くて消える研究者を救う準備術』をお届けします!」


参考

・Lieberman, M. D., et al. (2007). Putting Feelings Into Words: Affect Labeling Disrupts Amygdala Activity in Response to Affective Stimuli. Psychological Science.


・Magnon, V., et al. (2021). Benefits from one session of deep and slow breathing on vagal tone and anxiety in young and older adults. Scientific Reports.


・Stark, R., et al. (2023). Modulation of amygdala activity for emotional faces due to botulinum toxin type A injections that prevent frowning.



コメント


bottom of page